「イエスはこの比喩を彼らに話されたが、彼らは、イエスが話されたことが何のことなのか、分からなかった。」（ヨハネ10:6）

　イエスさまは、ユダヤ人たちに福音のメッセージを多くの譬えで語られました。それは、信じる人と信じない人の別れ道となりました。信じる人には入り口となり、信じない人には単なる戯言に聞こえました。この時、イエスさまはご自分を「羊の門」であると喩えて語りました。羊とは私たち人間のことです。救いに至る入り口だという意味です。そして、「わたしはあなた方に永遠のいのちを与える良い牧者」だと追加して説明されました。聞き流してはならない宣言です。私たちの永遠の運命がかかっているのです。しかし、人々には何のことか分かりませんでした。聖書を知っていたユダヤ人たちでも、その意味が分からなかったのです。いったい、なぜなのでしょうか。

　教会で伝道集会を催し、文化教室を開いて福音を語ります。日本中で、多くの人が福音を耳にします。でも、ほとんどの人は反応してくれません。語る者の力不足もあるでしょうが、何のことなのか分からないようです。わかるような気がするけど、今は必要がありません。間に合っているのでしょう。切迫感、危機感がありません。平和で豊かな時代だからです。でも、いつ突然苦難や災害が襲って来るかわかりません。信頼していた土台や日常が、一瞬にして奪い取られる時があるのです。そのときに叫び求めることができるように、福音を伝えておく必要があります。時が良くても悪くても福音を語れと命じられたのは、そのためです。忍耐して種を蒔けば、時が来て刈り取ることを信じよということです。

　はじめて教会の礼拝に出た時、正直、「私には必要ない」と思いました。というより「聞きたくない」と感じたのです。何が言いたいのかわかったのです。イエス・キリストを信じれば救われて天国に行ける。でも、信じなければ滅びて地獄で永遠に苦しむのです。小学生の時に観た映画「十戒」のことを思い出していました。このことだったのかと結びつきました。でも、私には必要ないと思いました。聞きたくないので教会には行かなくなりました。そんな私が、今、牧師をしているのです。かつての私のように、聞きたくない、必要ないと確信している人たちに福音を語る仕事に携わっているのです。なんという奇跡でしょうか。すべての人は救いを必要としています。福音を聞かなければなりません。聞かなければ救われないからです。それが、今の私の確信です。